ステンドグラスって何?
様々な技法
ステンドグラスと一言で言っても、様々な技法、種類に分かれます。各工房によって、取られているスタイルや技法は異なりますが、ここでは一般的なものを取り上げてみます。
トラディッション(ケーム技法)
ヨーロッパの教会で見られるステンドグラスの伝統的な技法です。現存するものでは9世紀のものがドイツのヘッセン美術館で所蔵されています。前項の『ステンドグラスとは』にもありますが、色板ガラスをカットしたものを鉛の桟(ケーム)を使って組み合わせていきます。その後鉛の桟がジョイントする箇所を半田ごてで半田付けし、ガラスと鉛桟(鉛線)の隙間をパテで埋めて完成させます。絵付けを施す場合は、グリザイユ、エマイユ(エナメル)、ジョンダルジョン(シルバーステイン)などのステンドグラス用の特別な顔料を用い、ガラスピースの上に絵を描いていきます。描いただけでははがれてしまいますので、これらを窯に入れて580~620℃程度(顔料の種類や炉によって異なる)で焼成します。
ダル・ド・ヴェール - Dalle de Verre
厚さ2~2.5㎝の厚板ガラスを使用する技法です(ちなみに上記トラディッションで使用されるガラスは、厚さ平均3㎜ほどです)。デザイン、型紙作成後、ガラスをカット、整形し、ガラスとガラスの間にセメントもしくは砂を混ぜたエポキシ樹脂を流し入れ固めます。ガラスは、ハツリを入れることによって、より輝きが増します。出来上がりは、ぱっと見た感じモザイク的で、ガラスが分厚いため、光を通すと水の中を覗いているような感じがします。1930年ごろに当時パリにあったアトリエ(Jean Goudin-ジャン・ゴダン氏)で生まれたこの技法は、以後教会や公共施設の窓にも採用されてきましたが、最近は少なくなっているようです。フランスのダル・ド・ヴェール作家といえば、ガブリエル・ロワール(1904 – 1996)が有名です。
ティファニー技法‐Tiffany
アメリカで生まれた技法です。ルイ・コンフォート・ティファニー(Louis Comfort Tiffany)氏が、アートの勉強でヨーロッパを訪れ、中世のステンドグラスに出会い、アメリカに帰国してから1878年に工房を開設。ガラスも不透明でマーブル状のものやいろいろな色が混ざったものなど、新しいマテリアルを開発、独自の技法を生み出しました。従来の伝統の技法(トラディッショナル)と同じく、デザイン、型紙を起こした後にガラスをカットします。カットされたガラスは研磨機にかけられた後、コッパーフォイルという銅はくのテープがガラス側面を一周するように巻かれます。そのコッパーフォイルの部分を半田で溶接し、ガラスピース同士が一体化します。絵付けは最小限で、ガラス自体の色とテクスチャーで表現します。この技法はもともとアールヌーボーの家具や建築、ティファニーのランプなどで知られていて、日本でも今日ステンドグラスといえば、このコッパーフォイル方式のものを想像される方が多いようです。その制作の手軽さもあって、ランプや鏡、箱などの小物類の制作にも応用でき、趣味で楽しめる分野でもあります。フランスでは近年ステンドグラスの修復でこの技法を用いることもあります。
フュージング技法 - Fusing
ベースとなる1枚のガラスの上に、カットしたガラスピースを熱によって融着させるテクニックです。テクニックとしては紀元前からあるものですが、1920-30ごろのアールデコ運動によって再発見され、アメリカでも広く採用されたテクニックです。融着させるガラス同士は、膨張率が同じものを選ばなければなりません。830℃まで温度を上げる必要があるので、1000℃くらいのキャパシティのある窯が理想でしょう。最近ではフランスでもフュージングの技法を取り入れたステンドグラスが教会に取り付けられています。
テルモフォーマージュ‐Thermoformage
熱によってガラスを曲げたり、形を変形させる技法です。フュージング技法と組み合わせて用いられることもしばしばです。ガラスの種類や厚みによって、適用する温度や熱の加え方が異なります。フュージング、テルモフォーマージュとも、建築物に取り付けるステンドグラスだけでなく、お皿や器、アクセサリーなども制作することができます。
ジェマイユ - Gemmail
いろいろな形のガラスピースを重ねることによって、色の濃淡を調節し、絵画をガラスで表現します。フランスのステンドグラス工房で、このジェマイユl技法を取り入れているところはほとんど見かけませんが、ガラスという素材を使用することから、ここで紹介しておきたいと思います。ジェマイユは、作家とジェマイストと呼ばれるジェマイユ職人とが共同で制作することが多いようです。ライトテーブルの上にジェマイストが1ピース1ピースガラスの破片を原画を見ながら載せていき、作家が高い位置からそれを見て可否を指示します。この時点では仮接着された状態で、最終的にOKが出れば一度窯で焼成し、その接着剤を一度蒸発させます。その後エナメル質の透明な顔料を全体にかけて再度焼成します。フランスでは、トゥール(Tours)市内及びカトリックの聖地で有名なルルドにジェマイユ美術館がありましたが、今では閉鎖されたようです。